下肢静脈瘤と血管内塞栓術(グルー治療)

下肢静脈治療のこれまで

下肢静脈瘤の治療においては以前、伏在静脈の全長を引き抜く古典的なストリッピング手術が行われた時代がありましたが、よほどひどい静脈瘤でないと手術は行われず、多くの方が弾性ストッキングを履いて様子を見るよう言われていました。 2011年に初めて「血管内レーザー焼灼術」が保険適用となると、やさしい低侵襲治療として注目が集まり、多くの方がこの治療を受けるようになりました。 これは、局所麻酔の後、静脈を穿刺してファイバーを静脈内に進め、血管の内側から伏在静脈を焼灼して逆流を止める血管内治療です。 その後2014年には新しいタイプのレーザーや高周波による血管内焼灼術が登場し、術後の出血や疼痛がさらに緩和されました。 近年ではさらに新しい治療法が開発されています。 レーザーや高周波のように熱を使って静脈を焼くのではく、熱を使用しない、そのための浸潤麻酔が必要ないという意味のnon-thermal non-tumescent (NTNT)治療が開発され、欧米ではいくつかの方法が実際に治療に使用されるようになりました。

血管内塞栓術(グルー治療)
VenaSeal グルー治療に使用する接着剤とカテーテルおよび注入用ガン(メドトロニック社製、VenaSealクロージャーシステム)

NTNT治療の中で、2019年に国内で承認された方法が血管内塞栓術です。 グルー(glue)というのは英語で糊という意味です。 この方法は、伏在静脈の中にカテーテルを挿入し、伏在静脈を圧迫しながらカテーテルの先端から伏在静脈内に瞬間接着剤(シアノアクリレート)を注入して、伏在静脈をふさぎ、逆流を止める血管内治療です(下図)。

血管内塞栓術

レーザーや高周波による血管内焼灼術とは異なり、熱を伴わないこの治療は周辺組織への影響がレーザー治療よりも少なく、出血斑や疼痛、神経障害などがさらに生じにくいのが大きな特長です。 治療中の浸潤麻酔や鎮静剤が不要で、局所麻酔もわずかな量であるため、治療後にすぐ帰宅でき、車の運転や仕事も治療直後から可能です。 術後の弾性ストッキングの着用も原則必要ありません。但し、本治療はアレルギー体質の方には不向きです。 また、病状により、血管内レーザー焼灼術のほうが効果的な方にはそちらをお勧めしています。

この治療を行う施設と医師は、学会から認定を受ける必要があります。 当施設での治療は、もちろん保険適用です。

静脈を少し圧迫しながら、右手の注入用ガンで瞬間接着剤を注入します

静脈を少し圧迫しながら、右手の注入用ガンで瞬間接着剤を注入します

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