小児アトピー性皮膚炎に対する治療選択肢が増えました

小児のアトピー性皮膚炎でお悩みの方も多いと思います。 最近、飲み薬や注射剤で新たに使えるようになった治療法があり、今までよりもたくさんの選択肢から選ぶことができるようになっています(図1)。 図1に示した治療法のほか、保湿剤や漢方薬なども使用できます。

小児アトピー性皮膚炎に対する治療薬(図1)
薬剤名
外用剤 ステロイド外用剤 (ジフルプレドナートなど)
カルシニューリン阻害剤 タクロリムス(プロトピックなど) 2歳以上、0.03%製剤のみ
ヤヌスキナーゼ阻害剤 デルゴシチニブ(コレクチム) 0.25%製剤
0.5%製剤も使用可能
PDE4阻害剤 ジファミラスト(モイゼルト) 0.3%製剤
1%製剤も使用可能
内服薬 抗ヒスタミン剤など (フェキソフェナジンなど) 薬剤により異なる
ヤヌスキナーゼ阻害剤 バリシチニブ(オルミエント) 体重30kg以上:4mg
体重30kg未満:2mg
それぞれ減量可能
ウパダシチニブ(リンヴォック) 12歳以上/体重30kg以上:15mg
アブロシチニブ(サイバインコ) 12歳以上:100mg
200mgに増量可能
バイオ製剤 デュピルマブ(デュピクセント) 生後6ヶ月以上
用量は体重により異なる
ネモリズマブ(ミチーガ) 6歳以上:30mg
13歳以上:60mg
外用剤

外用剤は、今までステロイド剤とカルシニューリン阻害剤(タクロリムス軟膏~プロトピック軟膏など~)および保湿剤が中心でしたが、ここ数年で新たな選択肢が増えました。

1つはコレクチム軟膏で、ヤヌスキナーゼ阻害剤というステロイドではない抗炎症剤が使用されています。 1回あたりの使用量に制限はありますが、ステロイド剤とは異なる効果を有します。 小児では0.25%製剤が使えますが、症状が強い場合は0.5%製剤を使ってもよいことになっています。 顔にも体にも同じ薬で対応できる点が、ステロイド剤と異なります。

2つ目はモイゼルト軟膏で、ジファミラストというこれもステロイドではない抗炎症剤が配合されています。 外用量は面積で決められていますが、全身に使うことが可能です。 小児では0.3%製剤が使えますが、症状が強い場合は1%製剤を使ってよいことになっています。 モイゼルト軟膏もコレクチム軟膏と同様、顔にも体にも同じ薬で対応できます。

外用量の目安

外用量の目安

外用剤は手のひら2個分に指1関節分の薬を塗るのが基本です(フィンガーチップユニット~FTU~、図2)。体から手足にかけて広く薬を塗る場合、生後6ヶ月では約4g、2歳では約6g、5歳では約8g、10歳では約11gの薬が必要です。ベタベタつけるのがよいとされており、よく伸ばして塗ると肝心の皮疹に対して十分な薬が届かず、効果が落ちるとされています。べたつきを嫌がる子どもさんも多いでしょうが、1日1回でもよいので十分な外用をするのがよいと思います。

内服薬および注射剤

飲み薬は、主に抗ヒスタミン剤が使われていました。 最近、ヤヌスキナーゼ阻害剤(コレクチム軟膏と同じ系統のお薬)であるオルミエント錠で2歳からの小児アトピー性皮膚炎に適応が追加されました。 体重30kg以上では4mg錠を、30kg以下では2mg錠を基本とし、症状がよければそれぞれ2mg/1mg錠に減量してよいとされています。 副作用に注意して服用を始める必要があるため、あらかじめ血液検査などで感染症などに関する問題点がないかどうか確認する必要はあります。 このほか、12歳以上/体重30kg以上ではリンヴォックが、12歳以上ではサイバインコが使えます。

注射剤では、デュピクセントで生後6ヶ月以上の小児に対する適応が追加されています。 投与量は体重によって異なりますが、1回200~300mgを2~4週ごとに注射することでアトピー性皮膚炎の治療を行います(図3)。 特に事前の検査は必要ありませんが、注射剤なので子どもさんに痛みや恐怖感を抱かせる可能性は十分考えられます。 このほか、アトピー性皮膚炎に対する痒みに対して6歳以上の小児にはミチーガの注射が使えます(図1)。

デュピクセントの体重別投与量(図3)
成人 初回600mg、以降2週ごとに300mg
小児 体重60kg以上 初回600mg、以降2週ごとに300mg
小児 体重30kg以上~60kg未満 初回400mg、以降2週ごとに200mg
小児 体重15kg以上~30kg未満 初回から4週ごとに300mg
小児 体重5kg以上~15kg未満 初回から4週ごとに200mg
長期寛解を目指した治療

長期寛解を目指した治療

アトピー性皮膚炎の治療を進める場合、重視しなければならないのは長期にわたりよい状態を維持すること(長期寛解維持)です。 症状が治まればつい外用などを怠りがちになりますが、これは図4の黄色の部分に相当し、手を抜くとすぐに悪化するレベルです。 この時点でも間隔を調整しながら外用などを続け、図4の青色の部分(炎症がほぼない状態)にまで皮膚の状態を進めることが大切です。 この状態でも治療を怠ることなく、1週間に1回はしっかり外用するなどの悪化防止のための治療を続け、良い状態を維持するようにします。

十分な効果が得られないと、つい治療レベルで妥協しがちです。
「まあまあ治まれば少しくらい痒みや発疹があってもいいか・・・」こう考える方も少なくないと思います。 しかし、今は十分コントロールすることが可能になりつつあります。 アトピー性皮膚炎のコントロールが良くなると、夜の眠りが改善し、日中のパフォーマンスが上がります。 子どもさんの学習や運動に良い効果を与えることになるでしょう。 医師と相談し、自分の症状に合わせた適切な治療を選択し、十分な寛解状態の維持を目指すようにしましょう。

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