長野松代総合病院整形外科 後期研修医ダイジェスト

スポーツ整形外科 部長
松永 大吾

ようこそ、長野松代総合病院整形外科後期研修課程(秋月道場)へ。 指導医の一人で、スポーツ整形外科部長の松永です。 このサイトに行き着いた貴方は、たいへんな強運の持ち主です。 なぜなら、これまで多くの若手整形外科医の登竜門となってきた本課程の存在を知ることができたからです。

ここでの修行は、決して甘くはありません。 けれどもそれは、良質な医療を提供できる高尚な喜びを多くの若い先生にも味わって貰いたいという、私たちの願いから来ています。 患者さんから「ありがとう」と言われたときの達成感は、何事にも代え難いものではありませんか。

もしかしたら貴方は、「深刻な医師不足で、医師免許さえ持っていれば引く手あまたのこの時代に、あえて厳しい研修を積む必要があるのか」と思っているかもしれません。 最低限の仕事さえこなしていれば、それなりの社会的評価も得られると。 けれでも、そんな時代はもうすぐ終焉を迎えることでしょう。

未曾有の開業ラッシュにより、すでに開業医は首都圏以外でも飽和状態に達しつつあると推察されています。 また、2010年度から本格的な医学部定員の増加が始まっていますから、今後医師数はどんどん増加していきます。 その一方で、医師や高齢者の増加による社会保障費の膨らみを抑制するためのシナリオ作りは、すでに始まっています。 今後、わが国の医療政策は「医師数は増やしつつ、人件費(医師の報酬)は減らす」方向で舵を取ることが決定的となっているのです。

その証左として、2011年6月ついに厚生労働省は、外国人医師による診療解禁を決定しました。 「日本人医師を指導できる優秀な外国人医師に限定する」と厚労省は弁解していますが、日本とは比較にならない高給取りの欧米勤務医が来日したがるとは思えません。 格安の報酬でバリバリ働く外国人医師が、アジア圏から次々と輸入されることでしょう。 当然、怠慢な日本人医師は失業もしくは安く買い叩かれ、次第に医師全体の報酬の相場も下がっていくことになります。 ただそうなると、日本人医師全体のモチベーション低下が危惧されるので、おそらくドクターフィーの導入などで「社会的貢献度が高く、有能な外科系勤務医だけは優遇しよう」という流れになるはずです。 すなわち、「勤務医であれば、誰でもほぼ平等に社会的評価が受けられる」という時代が終わろうとしているのです。 高度な知識と確かな技術、論文執筆などで養った学問的素因、高い社会性と人間性、そのすべてが整形外科医に求められる時代は、すぐその角にまで迫ってきています。

とはいえ、どこででも厳しい修行が積めるものではありません。 「水は低きに流れる」といいます。 ともすれば、人は安易な生き方を選びがちです。 「この病院は仕事が楽だから、このまま研修を続けよう」「研修医でも自分の好き勝手に手術をしていいらしいから、あの病院で後期研修しよう」という心構えでは、潰しの利かない整形外科医として後戻りのできない人生を歩むことになります。 もちろん、低い診断能力や稚拙な手術手技は医療ミスにもつながります。 医療ミスは患者さんやその家族を不幸にしますから、刑事処分・民事賠償・行政処分・社会的非難などを受けることで、その償いをしなければなりません。

研修医を厳しく指導できない事情は、病院側にもあります。 人手不足で右往左往する多くの病院にとって、後期研修医は大事なお客様です。 「○○先生、この筋鈎を引いていただいてもよろしかったでしょうか?」と、研修医相手にどっちが上司か分からないような気遣いをする指導医も珍しくありません。 対照的に、自分のノルマまで研修医に押し付けて、指導もせずに早々と帰宅する指導医も珍しくありません。 さらには、病院長は後期研修医を喜んで採用したものの、現場の診療科では「どこの馬の骨とも分からない(医局人事と関係のない)奴に指導できるか!」と放置されてしまう悲惨なケースもあります。 「ゆとり教育」「派遣使い捨て」「ネグレクト(育児放棄)」で潰されていく研修医も、現実には少なくないのです。

その点、当院では研修医を放置することはありません。 どちらかというと、熱苦しい指導が受けられます。気合いの足りない研修医には怒声が飛ぶこともあります。 けれども、決して厳しいだけの修行ではありません。そこには厳しいなりの達成感や充実感があります。 愛情とユーモアもあります。 チーム医療を徹底する姿勢から生まれる強い連帯感もあるのです。

「褒めて育てる」「決して叱らない」というのが、最近の教育や指導の大原則のようですが、秋月道場では間違ったことをすると厳しく注意されます。 それは私たちが人の命を預かる職業に従事しているからです。 ちょっとした油断や甘えが、命に関わる重大事故につながりうるからです。 「褒めるべきは褒める、叱るべきは叱る」というのが、当院指導医の基本スタンスです。

その代わり、当院には医局や学閥の壁も偏見もありません。 信州大学整形外科の研修病院として医局人事の研修医を受け入れている以外にも、他大学の医局などから国内留学生を長く受け入れてきた実績があります。 フリーランスの国内留学生も修行しています。 覚悟を持って研修に来た挑戦者に対しては、最大限の誠意と熱意を持って指導するというのが、私たちの信念なのです。

秋月院長を筆頭に7名の指導医による指導スタイルは、わが国で古来より武道の修行や職人の養成で行われてきた徒弟制度そのものでもあります。 近代史において日本の高度な教育体制を支えた「藩校」「私塾」「寺子屋」の教育システムです。 奇しくも現代教育において、この教育システムが日本人の気質にもっとも適した教育スタイルであることが、今まさに追認されているそうです。 複数の研修医が金魚のフンのようにゾロゾロと指導医についてまわる「軍隊式」の西洋教育は、日本人の気質には合っていないのでしょう。 江戸で私塾を開き、幕末の日本史を動かした偉大な教育者佐久間象山を輩出し、旧松代藩が文武学校という優れた藩校を設けた町、松代。 その中心地に当院が存在することは、単なる偶然ではないのかもしれません。

秋月道場の卒業生たちは、いまや医局や学閥の垣根を越えて業績を築き、全国の病院や大学でリーダーシップを発揮しています。 それこそが秋月院長の目指しているグローバルな人間作りなのです。

私自身、当院で修行してきた中で、大きく3つの基本指導理念がここにはあると考えるようになりました。 すなわち、「基本を徹底すること」「明確な目標を持つこと」「準備を怠らないこと」です。基本の重要性については、以下の各項目であらためて詳細を紹介しますが、外来ではアナムネの取り方、手術室では糸結びはもちろん、ハサミや筋鈎の使い方までも徹底して教え込まれます。 「明確な目標」とは、高いレベルの医者を目指せということに他なりません。 「準備を怠らない」とは、そのための準備を怠るなということです。 どんなに忙しくても、「時間は守れ」「手術の予習をしろ」「糸結びを練習しろ」「論文を読み書きせよ」ということです。

手術の助手をするときでも、「術者が次に何をしようとしているのか」を常に先読みし、「積極的に手術に参加せよ」ということです。 いつ自分が術者に指名されても良いように、常に心の準備ができていなければなりません。 そのような姿勢が指導医から評価されれば、当院では年齢や経験に関係なく、ある日突然に術者に指名されます。チャンスはたまにしかあたえられません。 患者さんは研修医の練習台ではないからです。 準備を怠らず、与えられたチャンスを確実にものにできる人間だけが、免許皆伝を与えられるのです。 そしてその心構えこそが、医療現場を離れて一社会人に戻ったときにも、やがて一人前になって旅立つ日が来ても、人間力となって新たな人生の道を切り開いでくれるのです。

当院の具体的な教育システムについては、メニューの各項目をクリックしてご覧下さい。 長野市の外れにあるこの病院に、どうして全国から研修医や患者さんが集まってくるのか。 どうして国内トップレベルの臨床成績(手術件数および手術成績)と学術業績を挙げられるのか、その理由を知るだけでも当院の教育システムに触れる価値は十分にあるでしょう。

「鉄は熱いうちに打て」といいます。卒業して10年も経てば、どんな医師でも自分流のスタイルが出来上がり、プライドも高くなります。 謙虚な気持ちも、どん欲に知識を吸収しようという意欲も、それに必要な脳の柔軟性も失われていきます。 そうなると簡単にはリセットできません。 当院では、一流を目指す若くて熱い研修医の挑戦を心よりお待ちしています。

佐久間象山先生銅像
佐久間象山先生銅像
(病院から徒歩6分)
松代藩文武学校
松代藩文武学校
(病院から徒歩3分)
屋上へリポートから見た霊峰皆神山
屋上へリポートから見た霊峰皆神山
松代病院の周囲3方は山
松代病院の周囲3方は山
(右手は皆神山)
病院から徒歩5分くらいのところでも、こんな田園風景が広がります
病院から徒歩5分くらいのところでもこんな田園風景が広がります。